ワクワクが止まらない情報理論と生物学の邂逅

東大、シャノンの情報理論を用いて細胞の情報伝達がロバストであること発見

このニュースを読んでワクワクが止まらなかった。

このニュースはどういうニュースだったのだろうか。
要点はこうだ。生物学の対象である細胞を
情報学のシャノン理論に当てはめた場合、
堅牢(ロバスト)という性質を持っていることが分かった。

これの何が発見なのだろうか。
私が解釈したのはこういう話だ。

ES細胞やips細胞という「幹細胞」がある。
幹細胞というのは、幹というだけあって様々な臓器や身体のあらゆる細胞の元となりうる細胞だ。

これらの幹細胞は胃や足や脳などに変化していくわけだが、
様々に変化していくということはつまり元々「何」になるのか
遺伝子で決まっているわけではないということだ。

では幹細胞はどのように「何」になるのかが決まっていくのか。
知恵蔵2013によると「適切な条件を与えられる」とそれぞれの臓器などに分化するというのだ。

一定の条件や文脈で初めて「何」になるのかが決定する。
これはどういうことだろうか。

幹細胞は予め何になるのか遺伝子で決定していない。
遺伝子という設計図で決定しておらず、ある環境の条件下ではじめて変化が決まる。

言い換えると幹細胞は特定の条件を提示する環境とやりとりをして自分が何に変化すべきかを決めている。
つまり幹細胞は環境と「通信」をしていると考えて良い。

ではその通信はどういう仕組みで成り立っているのか

この問いにおいて、生物学は情報学と邂逅する。
すなわち、細胞はどのように環境と情報をやりとりしているのかという問いが立つ。

今回東京大学の研究が明らかにした情報伝達の特性は堅牢であるということだ。
堅牢とは記事において「情報量が1ビットに保たれる」ということである。

細胞は環境と通信するが、その際に情報のやりとりはつねに
最小単位の1ビットに保たれる。

生物学と情報学の邂逅において細胞が異常増殖するガンは次のように解釈される。
ガンとはつまり細胞に異常増殖の情報命令が行われてしまった細胞群である。
そうであれば、異常増殖の情報命令をいかにして制御したり書き換えたりすることができるのかということが、
ガンを克服する医療の課題となる。

今回の研究を踏まえてガンへの異常な情報通信を制御するために
情報通信を阻害する薬を投与しても、それが堅牢性の通信(1ビットのピンポイント)
に直接介入していなければ、効果は期待できないことが分かった。

逆から言えば、その1ビットの情報通信にピンポイントに情報制御を施す薬か、
あるいは堅牢性が低い情報通信のやりとりがある細胞を見つけることができるならば、
そこを攻めれば良いという可能性が見えてきたというのがこの記事の話だ。

こうなると細胞に薬の効能を作用させる医学とは、
細胞への情報通信をどのように制御するのかという情報医学であるという局面が開けて来ている。

生物学は情報学へと水準移行を進めている。
マトリックスの想像力などとっくに現実に追いつかれてきている。
そういうことを思うとワクワクとニヤニヤが止まらない。